第505回:Decks of the Month 今月のデッキ(2025年7月)

 ライター・たるほさんによる、その月に活躍したデッキやメタゲームを解説するマンスリーコラム。
 第4回は、『星の涙』環境のクライマックスとなった7月のスタンダードを掘り下げます。

【今回のトピックス】

1. 最後まで環境を席巻し続けた「FFIVユウナ」
2. 使用制限と『深淵のガンスリンガー』でスタンダードはどうなる?
3. 新環境の有力デッキ候補と『星の涙』環境のまとめ

 みなさんこんにちは! 『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。

 今回は7月に開催された『MASTERS 2025 2nd season』の大阪大会静岡大会、広島大会の結果をもとに『星の涙』シーズンのスタンダード環境の最終盤を振り返っていこうと思います。

 永らく続いたスタンダード環境のメタゲームはどのような結末を迎えたのでしょうか? それではさっそく始めていきましょう!

7月の公式トーナメント優勝デッキの振り返り

 『星の涙』シーズンの締めくくりとなった7月は、スタンダードで3回の『MASTERS 2025 2nd season』が行われ、そのすべての大会を「FFIVユウナ」が制することとなりました。

 6月の札幌大会鹿児島大会から通算して5大会連続優勝というのはデッキの強力さを象徴する結果であり、使用率に関しても3大会すべてで最大勢力と、まさしく『星の涙』シーズンのスタンダード環境の王と言えるでしょう。

 そんな「FFIVユウナ」ですが、構築面ではメタゲームの深化に合わせたさらなる進化が見られました。


■『MASTERS 2025 2nd season 静岡』優勝:aaaa  デッキ:FFIVユウナ




■『MASTERS 2025 2nd season 大阪』優勝:riru  デッキ:FFIVユウナ


 静岡大会で優勝されたaaaaさん、大阪大会で優勝されたriruさんのデッキではともに【22-058H】カトル・バシュタールが採用されています。

 【22-058H】カトル・バシュタールのオートアビリティによって【20-125R】ローザ【15-119L】ポロム【15-011L】パロム【16-136S】アーロンといったカードを繰り返し使えるため、よりミラーマッチを意識したアプローチと考えられます。


 この他にもaaaaさんの構築では強力なEXバーストを持ちダメージレースや【20-075L】セシルのアビリティに爆発力を加える【14-113R】リヴァイアサンが追加されていたり、riruさんの構築では展開要員になる【21-067R】ガラフが採用されるなど、プレイヤーごとに構築の個性が見られるようになりました。

 そして「FFIVユウナ」が活躍するなか、【カテゴリ(IV)】ギミックを使用した新たなデッキが現れます。それが『MASTERS 2025 2nd season』静岡大会でミスティアーナさんが使用し準優勝を果たした「朱雀の闇」です。

■『MASTERS 2025 2nd season 静岡』準優勝:ミスティアーナ  デッキ:朱雀の闇

 【15-130H】朱雀の闇が持つ課題を【20-075L】セシルのアクションアビリティで解決しつつ、ジョブチェンジした【16-051L】セシルからフィールドに送り込むことでシームレスな展開を可能にしています。また、ターン終了時のオートアビリティは【25-104L】ユウナなどで妨害できないため、その点においても環境にマッチしたデッキと言えます。

 最終的に【15-130H】朱雀の闇がブレイクゾーンを肥やしつつ【14-023L】ギルガメッシュ [FFBE]でリーサルにつなげていくという流れも無駄がなく、環境終盤になって非常に完成度の高いデッキが登場することになりました。

スタンダードにおけるカードの使用制限と、迫る『深淵のガンスリンガー』

 大いに盛り上がった『星の涙』シーズンのスタンダード環境ですが、8月8日の『深淵のガンスリンガー』発売に合わせたカードの使用制限の更新が先日発表され、「FFIVユウナ」の中核を担うカードにはメスが入れられることになりました。

 ここからは、今回の使用制限の更新がスタンダード環境に与える影響について考察を加えておきましょう。

 まず「FFIVユウナ」については【25-104L】ユウナ自体が制限カードになったこと、ギミックの中核を担う【16-051L】セシル【20-125R】ローザが禁止になったことを受け、実質的に構築が不可能となりました。

 同じく【25-104L】ユウナを使用するデッキとして、「氷水」「土水」「水単」などの各種「バイキングユウナ」もありますが、こちらも【25-104L】ユウナの使用制限の影響を大きく受けるものの、デッキの軸となる部分は残っているので今後活躍の芽を残していると考えられます。 『深淵のガンスリンガー』では【25-104L】ユウナをサーチできる手段として【26-110R】シルヴェストルも登場するため、これを軸としつつブレイクゾーンからの回収に秀でた「土水バイキングユウナ」のような構築が研究されるかもしれないと個人的にはにらんでいます。



 そして現在、【25-104L】ユウナを使用しうるデッキの中で唯一ほとんど影響を受けないデッキが存在します。それが「火氷水【騎士】」です。

 『星の涙』環境の公式トーナメントでも高いアベレージを残してきた「火氷水【騎士】」はその完成度の高さから【25-104L】ユウナすら選択肢の1つであり、1枚のみ採用というデッキリストも少なくありませんでした。こうした実績から、デッキに1枚の【25-104L】ユウナでも十分に恩恵を受けられるデッキの筆頭として『深淵のガンスリンガー』環境でも活躍することは明白だと考えられます。

 では次に、今回の使用制限が間接的に既存の有力デッキへと及ぼす影響について考えていきたいと思います。

 これまでも記事で結論づけてきたとおり、『星の涙』シーズンのスタンダード環境のテーマは「いかに有効にフォワードを展開できるか」というものでした。その背景には、【25-104L】ユウナのアビリティを有効に使えるためにはフォワードの展開が前提であり、対戦相手からしても【25-104L】ユウナが動き始める前に自身の展開を押し付けねばならないという、【25-104L】ユウナを中心としたメタゲームがありました。


 その中心にあったカードやギミックが使用制限を受けたことにより、『深淵のガンスリンガー』シーズンでは一度このテーマから立ち返ることになりそうです。

 そこでまず注目が集まるデッキは「火風土水【光の戦士】」でしょう。『星の涙』シーズンは先述のテーマとしては逆風でしたが、それさえ乗り越えて『Standard Championship 2025』を制しており、『深淵のガンスリンガー』シーズンでも環境を引っ張る存在になるのは間違いなしです。


 また【25-104L】ユウナにより活躍の機会を減らしていたデッキも復権を果たしてくる気配があります。なかでも注目は「火風土水【光の戦士】」や「火氷水【騎士】」といった多属性デッキへのカウンターデッキとして呼び声の高い「土水カオスアーク」です。すでに『MASTERS 2025 2nd season』の静岡大会と広島大会で上位に名を連ねており、再びメインストリームに上がってくることが予想されます。

 「火水」や「水雷」などに代表されるモンスターデッキは今回の使用制限の影響もなく環境に残ると考えられますが、なかでもデッキ相性を覆すリーサル力を持つ「水雷モンスター」が頭ひとつ抜ける形になるのではないかと考えています。

『星の涙』シーズンのスタンダード環境の総括

 この春からスタートした『星の涙』シーズンのスタンダード環境は「いかに【25-104L】ユウナを使いこなすか?」というテーマをもとに環境が進み、多くのプレイヤーによって研究が行われました。

 最終的には【カテゴリ(IV)】ギミックの強力さが再発見されたことで「FFIVユウナ」が中心となったものの、その過程でさまざまなデッキに焦点が当たった環境だったと思います。

 一時代を築いたデッキが戦場を去ることで、歴戦の強者が息を吹き返すのか? それとも新たな開拓時代が幕を開けるのか? 『深淵のガンスリンガー』シーズンのスタンダード環境にも注目していきたいところです。


 それではまた来月お会いしましょう!