第518回:Decks of the Month 今月のデッキ(2025年9月)
ライター・たるほさんによる、その月に活躍したデッキやメタゲームを解説するマンスリーコラム。
第6回は、『深淵のガンスリンガー』環境が本格的に動き出した9月のスタンダードを掘り下げます。
【今回のトピックス】
1. スタートした『深淵のガンスリンガー』環境は群雄割拠!2. 各種有力デッキの顔ぶれと最新動向
3. 今後の展望と『MASTERS 2025 FINAL』に向けて
みなさんこんにちは! 『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
今回は9月に開催された『MASTERS 2025 3rd season』の福岡大会、和歌山大会、仙台大会の結果をもとに『深淵のガンスリンガー』シーズンのスタンダード環境について考察していこうと思います。
8月に発売された『深淵のガンスリンガー』ですが、『MASTERS 2025 3rd season』の前半戦はL3構築が中心だったため、国内のスタンダード環境のメタゲームはまだあまり深掘りされていません。ここから『MASTERS 2025 FINAL』に向けどのように深化していくのか見定めていきたいと思います。
9月の公式トーナメント活躍デッキを振り返り
まずは9月にスタンダードで行われた『MASTERS 2025 3rd season』を振り返っていきましょう。
『深淵のガンスリンガー』のスタンダード環境で国内初の公式トーナメントとなった『MASTERS 2025 3rd season 福岡』のメタゲームですが、新カードの登場と合わせて施行されたカードの使用制限の影響もあってか、ここ最近活躍の機会を減らしていたデッキが息を吹き返す様相となっていました。
一番人気は「火風土水【光の戦士】」でした。『星の涙』シーズンでも『Standard Championship 2025』優勝など結果を残していましたが、【25-104L】ユウナの活躍もあり使用率は減少傾向にあったデッキです。使用者数ではそれに「火水【戦士】」「火氷水【騎士】」「コスト3WoL」が続く形で人気を集めていました。決勝トーナメントに進出したデッキがすべて異なるアーキタイプだったというのも大会の特徴と言えるでしょう。
そんななか優勝を果たしたのはHunterNさんの「土単」です。
■『MASTERS 2025 3rd season 福岡』優勝:HunterN デッキ:土単
フォワード 20
バックアップ 19
召喚獣 11
LBデッキ 8
「土単」は【21-064L】イングズや【20-070C】革細工師といった単属性デッキで真価を発揮するパワーカードを採用しつつ、【6-084L】レオのアビリティによって任意の属性のCPを生み出すことで【19-128L】ウォーリアオブライトや【22-122L】ティーダのような土属性以外のカードを使用できる、単属性と多属性の強さをいいとこ取りしたデッキです。
強力なデッキパワーを有する代わりに準備段階でバックアップの展開が必須となるため、直近の環境で活躍していた「カオスコンボ」や「FFIVユウナ」など序盤からマウントを取ってくるデッキとの相性が悪いのがネックでしたが、カードの使用制限によりそれらが姿を消したのが追い風と考えられます。
今回優勝されたデッキには『深淵のガンスリンガー』の新カードとして【26-072R】タイタンが採用されており、単属性デッキとしての強みがより強化されています。
福岡大会の翌週に開催された『MASTERS 2025 3rd season 和歌山』は、最大勢力の「火氷水【騎士】」がトップ4を独占し、決勝トーナメントを一色に染め上げる大会となりました。
■『MASTERS 2025 3rd season 和歌山』優勝:ヒチウ@あそくま デッキ:騎士
フォワード 38
- 3 【18-015R】ラムザ/Ramza
- 3 【13-111C】ディリータ/Delita
- 3 【22-097L】クリルラ/Curilla
- 3 【12-126R】ガウェイン/Gawain
- 2 【22-017C】リリシュ/Lilyth
- 3 【24-005L】クライヴ/Clive
- 3 【12-127C】スタイナー/Steiner
- 3 【16-042R】ラスウェル/Lasswell
- 3 【24-001L】イフリート [XVI]/Ifrit (XVI)
- 3 【13-023R】シャルロット/Charlotte
- 2 【22-092C】アグリアス/Agrias
- 3 【22-006H】ガーランド/Garland
- 2 【18-030H】ファイサリス/Physalis
- 2 【12-103H】ベアトリクス/Beatrix
バックアップ 9
LBデッキ 8
『秘められた希望』で【22-097L】クリルラが登場して以降、スタンダード環境のトーナメントで見ないことがないほど活躍を続けてきた「火氷水【騎士】」ですが、『深淵のガンスリンガー』では新たに【26-030C】シド [WOFF]と【26-125R】異端の騎士 ガーランドの追加による強化を受けました。
特に【26-030C】シド [WOFF]は【21-119H】レナと合わせて採用することで、これまで「火氷水【騎士】」に対するカウンターとしてEXバーストを厚くしてきたデッキに対して逆にプレッシャーをかけることができるようになりました。和歌山大会でも使用率の2番手以降に「火風土水【光の戦士】」「土水カオスアーク」といった強力なEXバーストを備えたデッキが人気を集めていましたが、どちらも決勝トーナメントに勝ち上がることがなかった背景にはこの影響もあると考えられるでしょう。
9月の最後に行われた『MASTERS 2025 3rd season 仙台』は、22名の参加者のデッキ分布が合計で16種と『深淵のガンスリンガー』シーズンでも随一の多種多様なデッキが選択されたトーナメントとなりました。
群雄割拠のメタゲームを制して優勝されたのはちょーぎょーじさんの「火氷顕現」でした。
■『MASTERS 2025 3rd season 仙台』準優勝:ちょーぎょーじ デッキ:火氷顕現
フォワード 30
- 1 【24-009R】ジョシュア/Joshua
- 2 【26-009L】ジョシュア/Joshua
- 3 【26-018H】フェニックス [XVI]/Phoenix (XVI)
- 3 【26-005H】クライヴ/Clive
- 3 【24-005L】クライヴ/Clive
- 3 【24-001L】イフリート [XVI]/Ifrit (XVI)
- 2 【26-013C】バイロン/Byron
- 3 【18-107L】アクスター/Akstar
- 2 【24-028R】ジル/Jill
- 2 【26-034L】ジル/Jill
- 2 【16-030L】シャントット/Shantotto
- 2 【24-024R】シヴァ [XVI]/Shiva (XVI)
- 2 【26-029R】シヴァ [XVI]/Shiva (XVI)
バックアップ 15
モンスター 2
LBデッキ 8
「火氷顕現」は『秘められた伝説』で登場したテーマである「顕現」を主軸に据えたデッキで、『深淵のガンスリンガー』で新たな大幅強化を受けてデッキとしてより大成しています。
顕現ギミックの強みとして【24-001L】イフリート [XVI]や【24-024R】シヴァ [XVI]が発揮する除去性能の高さもさることながら、顕現元となるカードも放置できないというプレッシャーの強さも挙げられます。『深淵のガンスリンガー』では【26-021C】アナベラが追加され、より顕現へのプレッシャーが増していることもこの強みを後押ししています。
また「火氷」という属性の強みとなる【18-107L】アクスターは「火氷水【騎士】」への回答として適正がありつつ、顕現元がコスト3に集中しているのとも相性がよいため環境にマッチした強さを持つデッキと言えるでしょう。
まだまだある! 環境の注目デッキ
9月のトーナメントの優勝デッキを振り返ってきましたが、群雄割拠の『深淵のガンスリンガー』シーズンにおいて優勝デッキのみにフォーカスした考察では十分とは言えません。
ここからは優勝こそしていないものの、使用率も高く注目を集めているデッキに言及していきましょう。
「火風土水【光の戦士】」
逆風により『星の涙』環境では使用率を落としていた「火風土水【光の戦士】」ですが、トーナメントの結果から明らかなように『MASTERS 2025 3rd season』では常に使用率2位以内と順当にシェアを取り戻しています。『深淵のガンスリンガー』では新たな【ジョブ(光の戦士)】として【26-014L】ファリスと【26-120L】レナを獲得しています。特に【26-014L】ファリスは序盤の展開に寄与する1枚として活躍が見込まれており、デッキとしても順当に強化されていると言えるでしょう。
メタゲーム上のポジションでは宿敵である「FFIVユウナ」が姿を消した一方で、ライバルの「火氷水【騎士】」が【26-030C】シド [WOFF]を獲得したことで相性関係が不利に寄っているのが向かい風と言えそうです。
「土水カオスアーク」
「火風土水【光の戦士】」「火氷水【騎士】」といった多属性デッキへの対抗馬としてこちらも順調に使用率を取り戻しつつあります。懸念点としては「火風土水【光の戦士】」同様、「火氷水【騎士】」の【26-030C】シド [WOFF]によってEXバーストでの切り返しが難しくなったことでしょう。ポテンシャルの高さは現在ですが『深淵のガンスリンガー』で明確な強化を受けているわけではないため、今後環境しだいでどの方向に風が吹くかが注目です。
「コスト3WoL」
【21-121L】ウォーリアオブライトのサーチ兼コスト3の展開サポートとして【26-110R】シルヴェストルが登場したことで強化を受けました。現在特に活躍を見せている「火氷水【騎士】」に対して【18-107L】アクスターによる切り返しもできるためメタゲーム上のポジションもよさそうです。いわゆるテンプレートの構築がまだ確立されておらず、今後さらに研究が進む余地も残っている発展性の高いデッキと言えるでしょう。
9月のまとめと『MASTERS 2025 FINAL』にむけて
『深淵のガンスリンガー』シーズンのスタンダード環境が動き出した9月の公式トーナメントはまさに群雄割拠、さまざまなデッキが活躍した1か月でした。
そんななかで頭ひとつ抜けていると感じたデッキが「火氷水【騎士】」です。
記事内でも何度か触れたとおり【26-030C】シド [WOFF]の獲得によりEXバーストへの耐性が高まったことが挙げられます。またこれまで「火氷水【騎士】」ではあまり採用されることがなかった氷属性のバックアップであることから【16-042R】ラスウェルをキャストしやすくなるという点でもデッキの強化に寄与しています。
また『MASTERS 2025 FINAL』では『スターターセット2025』で追加された【27-128S】シャルロットが使用可能になっており、「火風土水【光の戦士】」との相性差がより明確になると考えられます。
こうした背景から、『MASTERS 2025 FINAL』に向けた『深淵のガンスリンガー』シーズンのスタンダード環境のテーマは「「火氷水【騎士】」といかに向き合うか?」ではないかと考えています。
2デッキスタンダードという特殊なフォーマットの性質上、「火氷水【騎士】」を使ううえでは相方となるデッキを限られたカードプールから選定しなければならず、対策する側を選ぶなら「火氷水【騎士】」に対抗でき、かつそのほかの有力デッキとも渡り合えるデッキを見つけなければなりません。
自らが扱いに長けたデッキを持ち込むのか、カードプールの深淵をのぞき新たなデッキを生み出すのか、プレイヤーの選択が問われます。『深淵のガンスリンガー』シーズンをまとめる一大トーナメント『MASTERS 2025 FINAL』に注目です。
それではまた来月お会いしましょう!