第485回:Decks of the Month 今月のデッキ(2025年5月)

 先月からスタートした、ライター・たるほさんによるデッキやメタゲームを振り返るマンスリーコラム。
 第2回は、『Standard Championship 2025』を控えてメタゲームの展開が本格化した5月のスタンダードを掘り下げます。

【今回のトピックス】

1. 5月の『MASTERS』は2種類のデッキが2日連続で優勝!
2. 2つのデッキの共通項と、それを備えた第3の有力デッキ
3. メタゲームが固まりつつあるなか、6月の要注目デッキは?

 みなさんこんにちは! 『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。

 今回は、5月に開催された『MASTERS 2025 1st season』の4大会、「高崎」「津」「諏訪」「徳島」の結果をもとに『星の涙』シーズンのスタンダード環境について考察していこうと思います。

 スタンダード環境のメタゲームはどのような推移をたどっているのでしょうか? それではさっそく始めていきましょう!

5月の『MASTERS 2025 1st season』優勝デッキの振り返り

 5月は隔週で、土日に東西の2会場で開催される日程でした。5月10日の高崎大会と翌11日の津大会では「火水モンスター」が優勝し5月24日の諏訪大会と翌25日の徳島大会では「火氷水【騎士】」が優勝するという非常に興味深い結果となっています。

 まずは「火水モンスター」「火氷水【騎士】」、それぞれのデッキについて考えていきたいと思います。


①火水モンスター


■『MASTERS 2025 1st season 高崎』優勝:はら  デッキ:火水モンスター




■『MASTERS 2025 1st season 津』優勝:しーゆー  デッキ:火水モンスター


 「火水モンスター」はその名のとおりモンスターを主軸としたデッキで、要となる【11-124H】リルム【4-138R】メルウィブ【21-115C】ラーサーなどの優秀なサーチカードと絡めて序盤から展開し、ミッドレンジ帯のゲームレンジで戦います。


 セオリーとなる動きは、

《1ターン目》
【4-138R】メルウィブ【21-115C】ラーサーから【11-124H】リルムをサーチして手札に加える。

《2ターン目》
1. 【11-124H】リルムをキャストし、【17-007C】ゴブリン【16-043H】アトモスをサーチしてフィールドに出す。
2. 【17-007C】ゴブリンから【12-008R】ゴブリンプリンセスをサーチして手札に加え、そのままキャストしてキャスト2回の条件を達成することで【16-043H】アトモスのオートアビリティを発動させ、バックアップ2体をアクティブにする。
3. アクティブにしたバックアップで【18-130L】フリオニール【24-005L】クライヴをキャストしてアタックする。


 というもので、1ターン目に【4-138R】メルウィブ【21-115C】ラーサー、2ターン目までに【18-130L】フリオニール【24-005L】クライヴを引いていれば、それ以外の要素はすべてサーチでまかなえるため高い再現性を持って動くことができます。

 メタゲームの中心にいる【25-104L】ユウナに対しても、ゲーム序盤から展開できる【11-124H】リルムの存在に加え、【25-001C】アームストロング【23-104H】湿地の魔女のアクションアビリティによる除去で対応が可能であり、対抗勢力として注目を集めるデッキの1つです。

 以前からトーナメントシーンに存在していたデッキでしたが、『星の涙』のスタンダード環境では先述した【25-104L】ユウナに対する適正や、【11-124H】リルムの天敵である【12-002H】アマテラス【25-104L】ユウナの影響により減少していることが追い風となり、環境のトップまで躍進したと考えられます。




②火氷水【騎士】


■『MASTERS 2025 1st season 諏訪』優勝:しど  デッキ:騎士




■『MASTERS 2025 1st season 徳島』優勝:しらさぎ  デッキ:騎士


 4月の下関大会でも優勝していた「火氷水【騎士】」は5月も引き続き活躍中です。

 「火水モンスター」同様、1ターン目の【4-138R】メルウィブ【21-115C】ラーサーからキーカードである【22-097L】クリルラをサーチして早いターンからダメージレースを仕掛けられるデッキで、サーチ手段による安定性において【11-124H】リルムに比べると【22-097L】クリルラはランダム性によりやや不安定さがあるものの、デッキそのものの出力の高さや、【16-042R】ラスウェル【12-126R】ガウェインを用いたサブプランの豊富さなどで「火水モンスター」以上のパワフルな攻めが魅力です。

 また【18-015R】ラムザ【22-006H】ガーランドといったブレイクゾーンからの回収手段が豊富なためリカバリー能力も高く、一度盤面を切り返されても相手に予断を許さない継戦能力も強みです。【25-104L】ユウナによって【12-002H】アマテラス【9-068H】ドラゴンといったカウンターカードが数を減らしただけでなく、最大の敵だった「土水カオスアーク」が影を潜めていることも追い風となっています。

 【22-097L】クリルラの登場ともにデッキタイプとして確立されて以来、今日まで環境の最前線で活躍してきた「火氷水【騎士】」ですが、前環境からの大きな変化として「火氷水【騎士】」自身が新たな武器として【25-104L】ユウナを獲得しています。

 持ち前の展開力に加え、【7-017H】ミースによるサーチや【13-111C】ディリータによるブレイクゾーンからの回収など、デッキを歪めることなく自然に【25-104L】ユウナを採用できる「火氷水【騎士】」は、「【25-104L】ユウナ」デッキの1つの完成形と言えるでしょう。

勝ち組の共通点から見える、もう1つの注目デッキ

 さて、あらためて「火水モンスター」と「火氷水【騎士】」について見てみましたが、この2つのデッキには構造的な共通点があります。それは、『1ターン目にサーチ効果を持つバックアップで初動を安定させ、2ターン目にフォワードを2体以上展開している』ということです。

 つまり現在のメタゲームは、2ターン目にフォワードを複数展開できるデッキが活躍する環境であると考えるのが妥当です。


 そして現在のトーナメントシーンには、この条件を満たすデッキがもう1つ存在します。それが「FFIVユウナ」です。


■『MASTERS 2025 1st season 津』準優勝:レオン  デッキ:FFIVユウナ


 序盤に【20-125R】ローザ【20-075L】セシルのセットを手札にそろえつつフィールドに展開し、【20-075L】セシル【16-051L】セシルに変身させてさらなる展開を狙う【カテゴリ(IV)】のギミックに【25-104L】ユウナを加えた、『星の涙』で生まれ新たなタイプのデッキです。これまで『MASTERS 2025』では優勝こそないものの、使用者がいなかった下関大会以外のすべてで決勝トーナメントに勝ち上がっており、ポテンシャルを発揮しています。

 構築のバリエーションも豊富で「土水」「風水」「土風」「土風水」など、想定するゲームレンジに合わせてさまざまな構築が見られる発展途上な面も持ち合わせており、今後の公式トーナメントでもさらなる活躍が期待されます。

5月のまとめと6月の注目デッキ

 5月の『MASTERS 2025 1st season』は「火水モンスター」「火氷水【騎士】」が2日連続で優勝し、メタゲームの構造が固まったように感じられる1か月となりました。現在のデッキのトレンドは「2ターン目のフォワード展開に優れたデッキ」と考えてまず間違いないでしょう。

 今週末に迫った『Standard Championship 2025』や6月以降の『MASTERS 2025 2nd season』では「火水モンスター」「火氷水【騎士】」「FFVIユウナ」が環境の中心を担うことが予想されます。5月のトーナメントを経て課題が明確になったことで、さらにデッキの研究も進んでいることでしょう。

 個人的な予想としては、これまで以上に【25-104L】ユウナが活躍する機会を広げていることにより、【18-107L】アクスターを採用できる「火水【戦士】」が株を上げていくことになるのではないかと考えています。「火水モンスター」「火氷水【騎士】」と同じく火属性と水属性を使用しており、現在活躍しているデッキの特徴である「2ターン目のフォワード展開に優れたデッキ」という要件を【21-010H】タイヴァスによって満たしていることからも可能性が感じられます。

 また「2ターン目のフォワード展開に優れたデッキ」への明確なアンサーを用意できたデッキは今後のトーナメントで活躍の幅を広げていく可能性が高いので、デッキ研究の1つのテーマとして設定しておくとよいかもしれません。

 6月は『世界選手権2025』の日本代表2名が決まる『Standard Championship 2025』でスタートし、その翌週からは『MASTERS 2025 2nd season』も始まります。

 環境の構図はこのベクトルでより深化していくのか? あるいは一石を投じるデッキが出現するのか、今後のメタゲームの動向からも目が離せません。


 それではまた来月お会いしましょう!