第482回:Decks of the Month 今月のデッキ(2025年4月)

 この春からの新企画として、『カードゲーマー公式Web』の公式記事連載でも長くライターを担当されたたるほさんによる、活躍したデッキやメタゲームを1か月単位で振り返るコラムをスタートします。
 第1回は、『星の涙』が発売されて新たな環境がスタートした4月のスタンダードを掘り下げます。

【今回のトピックス】

1. さっそく活躍を見せる【25-104L】ユウナ
2. 【25-104L】ユウナの特性にあわせて早くも動き出すメタゲーム
3. 5月の要注目デッキは?

 みなさんこんにちは! 『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。今回から毎月1回、公式トーナメントのメタゲーム考察記事を担当させていただくことになりました。
 今回は『MASTERS 2025 1st season』の福島大会と下関大会の結果をもとに『星の涙』シーズンのスタンダード環境について考察していこうと思います。それではさっそく始めていきましょう!

新たなスタンダード環境の幕明け!【25-104L】ユウナが与えたインパクト

 『MASTERS 2025 1st season 福島』(4月20日)は、『星の涙』シーズンのスタンダード環境で最初の大会ということもあり、多様なデッキが持ち込まれた大会となりました。

 特に注目を集めたのが新カードの【25-104L】ユウナを中核としたデッキで、最大勢力となった「土水ユウナ」をはじめ「氷水」「水単バイキング」といったバリエーションや、【25-104L】ユウナを搭載した「火氷水【騎士】」デッキも登場し、決勝トーナメントにも「氷水ユウナ」×2と「土水ユウナ」が駒を進める躍進を見せました。

 このことから、開幕戦でのメタゲームのテーマは「いかに【25-104L】ユウナを使いこなすか?」だったと考えられます。

 そんな【25-104L】ユウナを中心とした大会を制したのは、昨年の世界王者はらさんの持ち込んだ「火氷土【ソルジャー】」でした。


■『MASTERS 2025 1st season 福島』優勝:はら  デッキ:火氷土ソルジャー


 【25-104L】ユウナと同じく『星の涙』で登場した【25-007H】グレンを軸に【ジョブ(ソルジャー)】を展開する「火氷土【ソルジャー】」ですが、以下の理由からこのデッキは【25-104L】ユウナを中心としたメタゲームに大変適したデッキだったと考察されます。

理由①:【25-104L】ユウナの登場による【12-002H】アマテラスの減少

 アクションアビリティを武器に戦う【25-104L】ユウナの登場は、オートアビリティの重要度が高かったこれまでの『FFTCG』のセオリーを一変させるものでした。その中でオートアビリティへのカウンターカードとして大きな存在感を発揮し続けていた【12-002H】アマテラスは、【25-104L】ユウナ自体がオートアビリティへのカウンターカードであることや、【12-002H】アマテラスが【25-104L】ユウナに対しての役割を持てないこと、全体的に火属性のデッキが数を減らしたことなどから、『MASTERS 2025 1st season 福島』でも使用するデッキが少なくなっていました。

 しかし目に見えない脅威となる【12-002H】アマテラスと異なり、【25-104L】ユウナはフィールドに出るまではオートアビリティに干渉できないため、フィールドに定着する前であれば問題なくオートアビリティを発動させることができます。

 こうした背景から、新たなスタンダード環境は【25-007H】グレンのような、ゲーム序盤から高コストで強力なアクションアビリティを発揮するフォワードが活躍しやすい環境であると考えられます。

理由②:【25-104L】ユウナを使用する側のデッキは除去性能が高くない

 現時点での【25-104L】ユウナを使用するデッキはフォワードの展開力にフォーカスしたデッキが多く、相手のフィールドに存在する脅威を除去する手段があまり多くありません。そのため一度【25-007H】グレンから形成された盤面や、フィールドに残ることで脅威になり続ける【24-025L】ジェネシスなどを対処できないという弱点があります。

 特に【25-100R】マットは自身以外の【ジョブ(ソルジャー)】にアビリティからの耐性を与えつつ、アクションアビリティで【25-104L】ユウナを除去することも可能です。また「火氷土【ソルジャー】」には【18-107L】アクスターも採用されていますが、このカードはフィールド出たときに3つのオートアビリティを別々に発動させるため、【25-104L】ユウナで対応するのが難しく、単体で有効なカードでもあります。

 このように、デッキ単位で紐解いて考えていくと「火氷土【ソルジャー】」は【25-104L】ユウナというカードそのものや、【25-104L】ユウナが作るメタゲームに対して非常に有効な位置にいるデッキだったと考えられます。

 このことから【25-104L】ユウナに対する対策として有効な要素は

・【25-104L】ユウナが出てくる前に使用できる強力なオートアビリティ

・フィールドに残ることで脅威となるアビリティ

 であり、これらをきちんと備えているデッキが環境で活躍できると考えられます。


 この2つを満たすデッキとしては「火氷水【騎士】」や「コスト3WoL」などが当てはまりますが、『MASTERS 2025 1st season 福島』でもこれらのデッキを選択していたプレイヤーがおり、すでにプレイヤーの共通認識として研究が進んでいると考えられます。


 実際、福島大会の翌週に行われた『MASTERS 2025 1st season 下関』(4月26日)では「火氷水【騎士】」が最大勢力かつ優勝を果たしており、「ソルジャー」や「コスト3WoL」も見られました。


■『MASTERS 2025 1st season 下関』優勝:まっすー@あそくま  デッキ:騎士


 「火氷水【騎士】」は【25-104L】ユウナ対策の要素を満たしたデッキでありながら、フォワードの展開に長けていることから【25-104L】ユウナを採用することも可能で、かつ【12-002H】アマテラスで先述した強力なオートアビリティにも対処可能という、現在の環境に合った強みをハイブリッドで兼ね備えたデッキであり、海外の公式トーナメントでも結果を残していることから、今後の『星の涙』環境でも活躍していくことが予想されます。

4月のまとめと5月の注目デッキ

 スタンダードでの最初の2大会ではそれぞれ「火氷土【ソルジャー】」と「火氷水【騎士】」が優勝を果たしましたが、これらは【25-104L】ユウナに対して有効なフォワードを展開して戦うという共通点を持つデッキでした。このことから現時点の『星の涙』シーズンのメタゲームの特徴は、フォワードの展開を相手より質・量ともに優位に行うことにフォーカスされていると考えられます。

 この流れを受けて、今後トーナメントで活躍が期待されるのは除去性能に秀でたコントロール系のデッキです。特に前環境の「第六期名人位決定戦」でも活躍していた「水雷モンスター」は【23-104H】湿地の魔女のアクションアビリティによる除去なども見込めるため、注目デッキの1つだと考えられます。

 また、【25-104L】ユウナの活躍によって【12-002H】アマテラスと同じくカウンターカードの代表格であった【9-068H】ドラゴンも数を減らしているため、これまでよりもブレイクゾーンを活用したデッキが活躍しやすくなると考えられます。これにより、例えば「火単」はフィニッシャーの【22-113L】モント・リオニスが動きやすくなり、コスト2のバックアップで【25-104L】ユウナを対処しやすいこともあって、今後日の目を見るデッキになるかもしれません。

 5月は『MASTERS 2025 1st season』の4会場(高崎、津、諏訪、徳島)がすべてスタンダードで行われるほか、月末には日本代表2名が決まる一大トーナメント『Standard Championship 2025』が控えており、スタンダード環境が一段と盛り上がる1か月になるでしょう。4月の動向と結果を踏まえ、今後のメタゲームにも注目していきたいところです。


 それではまた来月お会いしましょう!