第231回:プロデューサーからスペシャル Vol.4 『FF-TCG』のジョブについて

 みなさんこんにちは! 『FF-TCG』開発プロデューサーの景山太郎です。イベントや製品のサポートが満足にできない心苦しい日々が続いていますが、せめてこのコラムだけでも定期的にお届けできればと思っています。ここでしか語らないことも盛り込んでいきますので暇つぶし程度でもみなさんに貢献できれば幸いです。

 さて、今回のテーマですが、キャラクターカードの要素のひとつである「ジョブ」に関して語っていきたいと思います。それではさっそく。

『FF-TCG』におけるジョブ

 いきなりですが、『FF-TCG』の「ジョブ」という言葉は本来の一般名詞としての「ジョブ」とはやや異なっている、というのはみなさんにとっても周知の事実でしょう。このゲームにおける「ジョブ」はその人の職業だけでなく、そのキャラクターがどういう存在なのかを示すものでもあります。例えば「吟遊詩人」や「ソルジャー」などはいわゆる本来の意味での「ジョブ」ですが、「ゴルベーザ四天王」や「ルシ」などはちょっと「ジョブ」の意味から離れています。さらに「モーグリ」や「思念体」までいくとさすがに本来の意味での「ジョブ」と呼ぶのは無理があるかもしれません。

 しかしながら「ジョブ」という言葉は『ファイナルファンタジー』を語るうえで欠かせない要素です。実際に『ファイナルファンタジー』シリーズには数々のジョブが存在します。
 「白魔道士」「黒魔道士」「モンク」「戦士」などのような有名なものだけでなく、こんなジョブもあるのか、と驚くようなものもいっぱいあります。たとえば【8-028R】仮面の男、【11-054R】謎の男、【11-093H】黒衣の男のジョブである「????」は、原作のゲームでも彼らのジョブとして登場します。いわばファイナルファンタジーにおいて正式に「ジョブ」として認められているのです。

 10年ほど前に『Chapter』シリーズの素案を作ったときに、僕はキャラクターの立場を示すこの項目を「ジョブ」と名付けることにしました。前述したように一般名詞としての「ジョブ」とはズレてしまいますが、さまざまなジョブが存在する『ファイナルファンタジー』のゲームという意味では「ジョブ」という単語を使うのは悪くない、と思ったのです。このこと自体は個人的には悪くなかったかな、と思っています。ただ、詳しくは後ほど述べますがさすがにちょっと無秩序にジョブの概念を広げすぎたかなと考えていまして、現在少しずつ方針転換を行なっています。



原作とTCGの狭間で

 さて、この「ジョブ」を各キャラクターにつける作業ですが、ぶっちゃけてしまうと属性やレアリティ、カードに使用するイラストを決めるよりはるかに大変です。原作で明確な「ジョブ」を持つものは非常に助かります。例えば『FFIV』のエッジは「忍者」ですし、カインが「竜騎士」なのは疑いようのない事実です。また、ユウナの「召喚士」やザックスの「ソルジャー」など、その世界での事実として明確に描かれている場合も簡単です。先ほど少し触れた「ゴルベーザ四天王」や「ルシ」などもゲーム内での立場は明確ですから(正確に「ジョブ」なのかどうかの議論はともかくとして)つけやすい部類に入ります。
 【3-130R】カイナッツォが「ゴルベーザ四天王」であることに異存がある人はそれほど多くはないでしょう。しかし、なかには非常に難しいキャラクターもいます。苦しまぎれにつけているジョブもそれなりにあります。プレイヤーが使うキャラクターはたいてい無理なくつけられるのですが、敵キャラクターは頭を悩まされるものが非常に多いです。【5-045H】バルナバの「メカ」や【8-026L】ガーランド [IX]の「管理者」などは自分でももう少しなんとかしたかったキャラクターでもあります。

 また、カードの要素の1つである以上、ある程度ゲームシステム上の意味を持たせたいというところもある一方で、原作の雰囲気を出すひとつの装置として働かせたい、という考えもあります。明確だけど特殊なジョブは、ジョブを強化するアビリティの恩恵を受けにくいのが困りものです。このあたりのゲームシステムか原作の雰囲気かのバランスをとるのも大変な作業の1つです。

 そしてもう1つ、そういったものとは違うベクトルで大変なことが言語の違いです。このことがジョブの決定にいくつかの制約をもたらします。例えば日本語では意味は似ていても違う単語が英語などでは同じ単語だったりすると、日本語では違うジョブのはずが英語では同じジョブになってしまうので、『FF-TCG』では使うことはできません。もちろんその逆に英語では違う単語でも日本語では同じ単語の場合も使うわけにはいかなくなります。また、言語によっては主語の性質で名詞が変化する場合もあります。こういった言語に依存する問題をすべてクリアしたうえでジョブ名を決めなければなりません。翻訳に関してはカード名や単語の長さなど「翻訳」というテーマだけで1回分語れるだけの内容があるのですが、ジョブに関しても非常にデリケートな作業を求めてきます。

今後の展開

 このようになかなか苦労する「ジョブ」ですが逆に言うとゲームのシステムとしても使えるし原作の雰囲気を出すのにも使える、ということでもあり、難しいながら気に入っている要素でもあります。ただ、3年半という期間、シリーズも『Opus XI』まで経過してきて、最初に少し話したように軌道修正などをしていく必要も出てきたかと思います。段階的にですが、例えば「少年」や「少女」というように、ちょっと「ジョブ」から離れすぎているものはなくしていこうと思っています。原作由来となるキャラクター固有の特殊なジョブが増えることはおそらくありますが、その逆に特徴がないのにジョブとしてもふさわしいとは言えないようなものは減らしていく傾向になると思います。

 それから、これはまだ僕個人のアイデアで開発チームに話を通したわけでもないので話半分に聞いていただきたいのですが、複数のジョブを持つキャラクターというのもおもしろそうだと考えています。たとえばアルフィノだったら「暁の血盟・クリスタルブレイブ」、オニオンナイトなら「光の戦士・忍者」というような感じに。アビリティとして持たせるのではなく、はじめから複数のジョブを持っていると、それをもとにしたシステムを考えることもできるはずです。せっかくのカードの要素の1つですから、これからも発展させていければ『FF-TCG』そのものの発展にもつながるのではないでしょうか。

 それでは今回はこのへんで。次回はちょっと趣向を変えまして、個人的に『FF-TCG』のなかで特に気に入っているカードを数枚、そのバックボーンも込みで紹介したいと思います。お楽しみに!